11th stage!

「紗由、両親と和解する」


扉イラスト:和泉つばす 挿絵イラスト:稀星学園高尾校美術部




「すいません、遅くなりました!」
 東京予選準決勝チームに割り当てられた楽屋に、紗由と舞菜が飛び込んだのはステージ開始まであとわずかの時間だった。
「おかえり、待ってたよ~」
 二人の前には、謡舞踊部の四人がすでにステージ衣装に着替えて待っていた。
「…衣装、着替えて」
 かえが声をかける。
 紗由たちは、慌てて持ってきたステージ衣装に着替える。
「あの、すいません部長さん、遅れてしまって」
 着替えながら謝る舞菜に、瑞葉は笑って首を振る。
「ううん、ええんよ。それより紗由ちゃん、お父さんとお母さんに会えたん?」
「えっ!?」
 紗由は一瞬頭が白くなり、着替え途中のスカートを床に落としてしまった。
「どどど、どうして?」
 そのまま固まって動かない紗由。
「おやおや、レディーがそんな姿のままじゃはしたないだろう?」
 香澄が落ちたスカートを持ち上げて、紗由の腰を隠す。
「あ、ありがとうございます…っ!」
 真っ赤になる紗由。
「あ、あの、部長さん、どうして紗由さんのご両親のことを知ってるんですか?」
「それはな…」
 思わせぶりな表情になる瑞葉。
「それは?」
「それは……ご両親が最初にうちらのところに来たんよ。『紗由は来てませんか?』ってな」
「あ…」
「そっか…」
 納得したような、脱力したような表情になる舞菜と紗由。紗由の両親がずっとロビーで紗由を待っていたと考えていたが、よく考えればその前に謡舞踊部に紗由がいるかどうか確認するのは当然のことだった。
「あの、それで両親は私のこと、何か言ってましたか?」
「何も言ってなかったわ。でも、だいたいは想像つくけれどね」
 今まで黙っていたみいが声を出す。
「あれ? みい先輩、今日はみぃみぃじゃないですね?」
「だ~か~ら~!」
「実ちゃん、冷静に」
「あ、そうみぃ。…どうも舞菜相手だと調子が狂うみぃ」
 みいは息を整えると再び話し出す。
「私は生徒会役員もしてるから、いろんな生徒のご両親とも会ったことがあるの。特に、生徒の部活動に反対してるご両親には、何度も会ったことあるのよ」
「それじゃ…」
「さっき、紗由のご両親が来た時の表情でわかったわ。たぶん二人は紗由のアイドル部での活動に賛成してない。むしろ反対してる。それとたぶん、紗由は最近までそのことをご両親に隠してたんだろうって」
「そ、そこまで!」
「紗由が最近、表情が浮かないって瑞葉が話してたもの。それとね、私と舞菜と一緒に、オルタンシアの二人と会った時。あの後、紗由が少し普段と様子が違ってた。今思えば、たぶん、紗由はあの時、家族に応援されてる二人と自分を比べてしまっていたのね」
「その通り……です」
「す、凄いです、みい先輩!」
「まあ、この程度の推理、みいにはわけないことみぃ」
「…名探偵みい、爆誕」
 ボソリと呟くかえ。





「なるほどなあ。それで舞菜ちゃんがご両親に頼んだら、なんとかステージを見てくれるとは言ってくれはったわけやね」
「は、はい。あの時は無我夢中で…。本当にあれでよかったんでしょうか?」
「舞菜は一生懸命説得してくれたわ。でも、うちの両親は頑固だから、ステージを見ただけで考えを変えてくれるとは思えないの」
「そうやな。確かにそんな簡単なことやないかもな」
「やっぱり……」
 瑞葉の言葉に、うなだれる紗由。
「面白いじゃないか」
「え?」
 紗由が顔を上げると、香澄が腕を組んで話していた。
「どうせこれはトーナメントの準決勝、勝てば決勝、負ければ敗退の一発勝負だ。それなら、紗由の両親を説得できるかどうかだって、同じ勝負だと思えばいい」
「で、でも…!」
「可能性が低ければ、挑戦をやめるのかい?」
 香澄が少し、目を細めて笑う。
「だったら紗由、君はボクを謡舞踊部に入れようと勝負を挑んで来た時、勝てる確信があったのかい?」
「あっ…!」
 思わず声をあげる紗由。
 香澄の入部をかけた戦い。紗由と舞菜とかえはあの時、香澄を仲間にしたい一心で、香澄にサバゲで勝負を挑んだのだった。
「ぜ、全然勝てる気、してませんでした!」
「…無謀な挑戦だった」
 舞菜とかえも声をあげる。
「確かにボクはあの時、プリンセスに追いつめられたね。凄かった。機動からフィニッシュまで完璧だったよ。さすがはダークシャドウプリンセスだ」
「…え、そんなでも…」
 赤面するかえ。
「でも、サバゲ勝負の勝ち負けで、ボクは入部を決めたんじゃない。ボクは君たちの心に負けたんだ。紗由、君たちの熱い気持ちが、アイドルを諦めていたボクの心を溶かしてくれたんだ」
「……」
 そう。あの頃香澄は、かつて自分が声を提供したボイスノイドの流行をきっかけに、アイドルへの道を諦めかけていた。
「もう人前で歌わない。そう決めていたボクの決心を変えたのは君だ。ボクはあの時決めた。もう一度、夢を見てみようってね」
「香澄さん…」
「紗由、君は人のためなら必死になれるのに、自分のこととなると少し、大人しすぎるんじゃないか」
 香澄はそう言って、伸ばした指を紗由のあごにあてて少し引き上げた。
「あ…」
「もう少し、自分に自信を持ってもいいよ、レディ…」
「ちちちち! 近い! 近すぎます香澄さん!」
 思わず二人の間に割りこむ舞菜。
「あ…! わ、私?」
 紗由も自分を取り戻す。
「か、香澄さん! わ、私に何を…!?」
「残念。もう少しだったのに」
「なにがもう少しなんですか!? 紗由さんに何をしようとしたんですか?」
「…かえも、知りたい」
 かえも舞菜に並んで、香澄の前に立っている。
「あははは」
 香澄は笑って身を翻した。
「まったく、途中まではほんまにええ話してたのになあ」
 ため息をつく瑞葉。
「そうね。でも、紗由には伝わったでしょ?」
 隣でみいが微笑んだ。
「え?」
「…紗由?」
 舞菜とかえが振り返る。
「はい。私、考え過ぎてましたね」
 紗由はさっきまでの不安そうな表情ではなくなっていた。
「昨日からずっと、私の頭の中では、両親を説得できなかったどうしようとか、そんなことばかりがぐるぐると回ってました」
「紗由ちゃんは真面目やからなあ」
「でも、わかりました!」
 紗由は目を輝かせている。
「私、今が楽しいんだって。アイドルの夢を追いかけて、部長と、舞菜と出会って、そしてみんなと出会って…そうやって今、ここにいる」
「かえと…みい先輩と…そして香澄さんと!」
「ああ、そうだろ?」
 香澄はまた笑う。
「KiRaReのみんなは最高です。だから、このみんなと一緒に最高のステージをすれば、そうすればきっと…」
「…どんな夢もかなう」
「どんな奇跡だって、起きるよ!」
 かえと舞菜が紗由に笑いかける。
「うん!」
 紗由が大きくうなずいた。



 プリズムステージ東京予選、準決勝のステージが始まった。
 最初に出て来たのは、KiRaReとは逆側のブロックだった。最初にパフォーマンスをしたのはステラマリス。相変わらず完璧なステージで、観客を沸かせていた。
 もう一組もさすがに準決勝に進んだだけあって、見事なパフォーマンスだったが、ステラマリスの後では見劣りして感じられた。
 ステージが終わり、数分して審査が発表される。決勝進出を決めたのは――やはりステラマリスだった。
 会場を埋め尽くした歓声がおさまり、二組がステージを去った後、KiRaReとオルタンシアの番が回ってきた。
 最初にパフォーマンスするのは――KiRaRe。
 ステージに飛び出した六人を再び大きな歓声が包む。
 それは前回の予選ステージではなかったものだった。
「凄い…!」
 紗由は思わず、観客席を見回していた。ぎっしりと席を埋めた観客の中から、KiRaReの名前を呼ぶ声が聞こえていた。
「そうか、私たちのこと、好きになってくれた人がいるんだ……」
 前回まで、紗由はそんなことを考えもしなかった。ただ、自分の夢を追いかけて必死に走ってきた。それだけだった。だけど――
「ねえ舞菜、アイドルって凄いね」
 ステージの上で、小さな声で隣の舞菜に話す紗由。
「……舞菜?」
 返事が返ってこないので、紗由は横目で舞菜を見た。
 舞菜は、小さく震えていた。
「……あ」
 紗由は気づいた。今まで舞菜はずっと、紗由を励ましてくれていた。両親との悩みを話した時は元気づけてくれた。実際にその両親相手に、見得を切ってくれたのも舞菜だ。
 なのに、その舞菜が今、ステージで震えている。
(そうだ。舞菜はやっぱり怖いんだ)
 舞菜はいつも戦うことを恐れている子だった。誰かと比較されることを怖がっていた。だったら――
(この準決勝が怖くないはずがない。オルタンシアの子たちと、直接戦うんだから。あの子たちと比較されるんだから…。そして、もし勝てばステラマリスと…舞菜のお姉ちゃんと戦うことになるんだから…)
 だけど、さっきまで舞菜はずっと、紗由をかばい、励ましてくれていた。自分の不安を忘れて、ただ、紗由のために……。
「舞菜…」
 紗由は手を伸ばして、舞菜の手を握った。
「紗由さん…?」
 舞菜は自分の不安を隠そうと笑顔を見せる。
「紗由さん、大丈夫! お父さんお母さん、きっと説得できるよ」
「ありがとう」
 紗由は今、目の前にいる舞菜のこと以外頭になくなっていた。
「舞菜、大丈夫よ。大丈夫」
 そう言って紗由は、強く強く舞菜の手を握る。
「私たち、ずっと一緒だよ」
 その時、ステージに前奏が流れ出した――



「KiRaReのステージ、素敵だねー」
「まあな」
 オルタンシアの二人は、ステージの脇でライバルのパフォーマンスを見ている。
「紗由ちゃんだっけか。さっきはずいぶん不安定な感じだったからどうかと思ったけど、ステージ出てくると全然平気っぽいな」
「平気どころか… なんだか他の五人を引っ張ってるくらいの勢いだよー」
 二人は再び黙ると、ステージを眺めた。
「……なんだか、不思議なグループだね」
「ん? どこが?」
「全員で息が合ってるってわけでもないのに、なんか魅入ってしまうというか…」
「あはははっ! 確かに息は合ってないなあ。あたしらに比べたらバラバラって言ってもいいくらいだ」
「もう! すぐそういうこと言って笑う。私、別に悪い意味で言ってるんじゃないのよ」
「……うん、わかってる」
 紫は少し真剣な表情になる。
「でもな、ちょっと面白いなって思ったんだよ。だって、陽花が他のグループのこと、気にするなんて珍しいから」
「……そうだね」
「日ごろから、あたしと一緒にいられて、楽しければいいって言ってるくせに」
「それは本当だよー」
 少し昔を思い出すように、遠くを眺めるような目になる陽花。
「だって、一年間だよ。一年も紫ちゃんを待ってたんだもん」
「悪かったな、待たせて」
 気取って言う紫に、陽花はクスリと笑う。
「……ホントよ」
「同い年に生まれてたら良かったか? もっと混乱されたかもしれないけど」
「もう変えられないよー。でも、一年前は本気でそう思ったの。紫ちゃんのいない一年は長かった。だから私、今、二人でいる時間がとっても楽しいし、それが一番大事だって思ってる」
「それはあたしも同じだよ」
「でも…、プリズムステージの予選に出て、他のグループをたっくさん見てると、なんかすごく刺激を受けるなーって思うようになったんだ。私たちとは違う、でも素敵なグループがいっぱいあるんだなって」
「そうだな。ステラマリスは凄い」
「凄すぎだよー。でも、KiRaReも…」
 二人はもう一度KiRaReのステージを見る。
「負けたくないな」
「わっ、紫ちゃんがそんなこと言うなんて」
「じゃ、負けてもいいのか?」
「ううん、私も負けたくない。素敵だって思えば思うほど、その相手に勝って、そして先に進んでいきたい。そんな気持ちが湧き上がってくるの」
「あたしもだ」
 二人の前で、KiRaReは歌を終えた。



 KiRaReがステージを終えると、続いてオルタンシアの二人が現われた。
 音楽が始まり、二人は前奏に合わせて踊り始める。それは以前、舞菜たちの前でも披露した、息の合ったパフォーマンスだった。
 アクロバティックな彼女たちの動きに、観客が湧く。
(すごいよ、紫ちゃん。いつもより、身体が軽い!)
 陽花が紫を見ると、同時に紫もこちらを見ている。
(ああ、あたしら、もっとやれるんだ!)
 二人の歌が始まると、観客の反応は一層高まっていく。



  (ねえ紫ちゃん…。紫ちゃんといると、私はどこまでだってやれる。そんな気持ちになれるんだよ)
 一瞬、振付で前に出た紫の後ろ姿を眺めながら、陽花はそう思う。
(ずっと、二人で一緒にやりたいって思ってた。そしてこれからもずっと…)
 紫が振り返って微笑む。
 まるで、陽花の思いが伝わったかのような笑顔だった。
 二人は互いにその目を見合わせる。
(陽花! ずっと二人で…)
(私たち、二人のやれる限りを見せよう!)
 一瞬伸ばした二人の手が触れあい、そしてその手が弾かれるように左右に分かれた。
 ステージ上でターンする二人の姿に、大きな歓声があがった――

 同じようにステージ脇でそのパフォーマンスを見ているKiRaReのメンバーたち。
「凄いね、オルタンシア…」
 紗由はただただ感嘆していた。
 他のメンバーたちも皆、同じ思いのようだったが、舞菜だけが少し違っていた。
「あれ?」
 オルタンシアのパフォーマンスの途中、舞菜は一度首を傾けていた。
「舞菜、どうかしたの?」
「いえ、その…」
 自信なさそうに口ごもり、首を横に振る舞菜。
「なんでも、ないと思います…」

 オルタンシアのパフォーマンスが終わると、会場内を歓声が埋め尽くした。
 その歓声に手を上げて答える陽花と紫の表情は満足そうだった。

 そうして二組のパフォーマンスが終わると、再び審査が始まる。ステージ上に並んで、結果を待つKiRaReとオルタンシアの二組。
 数分後、ステージに現われた審査委員長がマイクに向かって結果を発表する。
 静まり返った会場に、審査委員長の声が響いた。
「Bブロックの結果を発表します。決勝進出を決めたのは、稀星学園高尾校、謡舞踊部のKiRaReです!」
 満場の観客が大歓声を上げ、そしてその少し後に、拍手が波のように起きていった。
 ステージの上でKiRaReの六人は、その拍手の中でただ、立ち尽くしていた――



 楽屋に戻った六人は、手を取りあい、抱き合った。
「やったなあ~」
「当然みぃ!」
「見事だったよプリンセス」
「…エンジェル、完璧」
 紗由に駆け寄る舞菜だった。
「紗由さん、やったね!」
「舞菜のおかげよ」
 その部屋に、オルタンシアの二人がやってきた。
「あははっ! おめでとうな、KiRaRe! いいステージだったよ」
「私も感動しましたー」
「あたしらが負けたのは…ちょっと残念だったけどな」
 紗由が答える。
「お二人のパフォーマンスも最高でした! 私たちが勝てたのが不思議なくらいです!」
「お世辞でも嬉しいな」
「いえ、本当です」
 真剣に言う紗由の横で、舞菜がおずおずと尋ねる。
「あの、少し聞きたいことがあるんです」
「どうしたのー?」
「サビの前のダンス、変更しました?」
「え?」
 驚いた紗由が慌ててみいを見る。
「そんなとこ、変わってたみぃ?」
「確か、わたしの憶えてたのと違うかなって…なんとなくですけど…」
 自信なさそうに言う舞菜。
「あははっ! 凄いな、わかったんだ」
「いえ、本当になんとなくってだけで……」
「変えたっていうかー。実際には変えられなかったというかー」
「本当は、あそこでいつもよりもお互いに半回転ずつ大きく回るつもりだったんだ。練習でも何回かやってるし、成功できると思ったんだけど、ちょっとタイミングが合わなくて」
「それで、結局普段通りになったのー」
「式宮さんに気づかれたってことは、タイミングがずれて見えたんだろうな」
「審査にも影響したかもねー」
 ペロリと舌を出す陽花。
「そんなこと、ぶっつけ本番で変更したんですか?」
 紗由が驚いた表情で尋ねる。
「うん。KiRaReのステージを見てるうちに、二人とも絶対に負けたくないって気持ちになって。それで、自分たちのできる最高のパフォーマンスに挑戦しようって決めたんだ」
「そうだったみぃ…」
「でも、別に後悔してないですよー。二人で挑戦出来て楽しかったしー」
「そうだな」
 笑いながら、二人は視線を重ねると、再び舞菜たちに向き直った。
「あのー。よかったら私たちとKiRaReの皆さん、これからも友だちでいれたら嬉しいなって思ってー」
 おずおずとそう口にする陽花。
「わ、私たちと友だちに?」
 驚く紗由。
「うん。あたしはこれからもKiRaReのステージを見たい。それから、今度はまた公園のステージで、一緒にパフォーマンスなんかもしたいなって」
「こちらこそ! お願いします!」
 声を上げる舞菜。
「私もです。お願いします」
 紗由も並んで頭を下げる。
「うちらが断る理由はないわあ。ぜひ、よろしくお願いします~」
「こちらこそ」
 紫と瑞葉が互いに手を差し出して握手した。
「ところで紗由ちゃん」
「はい?」
「お客さん、来てるみたいやわ」
 瑞葉がそう言って楽屋の入り口を見る。
 そこには、紗由の両親が立っていた!
「お父さん! お母さん!」
 緊張して、少し上ずった声を上げる紗由。
 紗由の両親は、ゆっくりと楽屋に入ってくると、紗由の前に立つ。
「あ、あの! どうでしたか、わたしたちのステージ!」
 舞菜が慌てて声をかける。
「……」
 黙って紗由を見る紗由の母。
 その横で、紗由の父が言った。
「とてもいいステージだったよ。あんなに生き生きした紗由を見たのは、ずいぶんと久しぶりだった」
 そう言って、笑顔を見せる紗由の父。
「そうね」
 紗由の母もうなずく。
「久しぶりだったわ。そういえば中学に入ってから、紗由は私たちの前では、ほとんど笑ってなかったのね。そんなこと、今さらながら気づいたわ」
「お母さん…」
「部員の皆さんも素敵な子たちだ」
「そうね」
「それに、新しいお友だちもできたみたいだね」
「ええ」
 父の声にうなずく母。
「それじゃ、お母さん、お父さん…」
「いいわ、続けてみなさい」
「頑張ってな」
 両親は紗由に向かって微笑む。
「あ…!」
 紗由の表情が喜びにあふれる。
「ありがとう、お父さん、お母さん!」
「よかったね、紗由さん!」
 舞菜が声をかける。
「舞菜、あなたのおかげよ!」
 手を取りあう二人。
「でも、やるからにはちゃんとやらなきゃダメですよ。中途半端は許しませんからね」
 そう釘をさした母に答えたのは、瑞葉だった。
「ふふっ。そこはご安心くださいな。もしも全国優勝できんかったら、今度こそ紗由ちゃんは退部させますから」
「え!」
 思わず声を上げる紗由。
「その通りだみぃ! 出るからには全国優勝以外ありえないみぃ!」
「ええええっ!」
 瑞葉とみいの宣言に、紗由も、そして舞菜たち他の部員たちも、思わず声をあげてしまった。
「な、なにを言ってるんですか部長! それにみい先輩も! まだ私たち、全国に出場も決まってないんですよ!」
 慌てる紗由の前で、紗由の両親は感動して瑞葉に声をかける。
「さすがは部長さんですね」
「その約束、確かにお聞きしましたよ」
「まかしてください」
 自信満々の瑞葉だった。
「さ、紗由さん~~!」
「舞菜、ど、どうしよう~!」
 紗由には、状況が今までよりも悪くなったようにしか思えなかった――