17th stage!

「KiRaRe、結果を受け取る」


扉イラスト:和泉つばす 挿絵イラスト:稀星学園高尾校美術部




 プリズムステージ東京予選決勝が終わり数日たったある日。瑞葉から呼び出しを受けた舞菜たちは、まだ夏休み中の学校へと集合する事になった。
 校門まで続く坂道を上りながら、舞菜は沿道にある山桜をふと見上げ、足を止めた。
 青々とし葉が夏の日差しを受けてそよいでいる。木漏れ日に目を細め、舞菜は小さく呟いた。
「懐かしいなぁ…」
 高尾校に転校して来た時、この桜にはまだ花が残っていた。舞菜は不意にそんな事を思い出し、暫く葉桜を見つめていた。
『舞菜』
 背後から聞こえてきた声に振り向くと、いつの間にか紗由が立っていた。
「あ、紗由さん、おはよう」
「おはよう。どうしたの? こんなところでぼーとして?」
「ちょっと、思いだしてたんだぁ」
「思い出してた…?」
「うん。この桜が咲いてた頃は、また歌って踊れる事になるなんて思ってなかったなーて…」
 紗由は無言で桜を見上げ、舞菜が高尾校に来た頃の事を思い出した。
「そうね…。私もこの桜が咲いてた頃は、まさか廃部寸前の謡舞踊部がプリズムステージ目指して、しかも…東京予選の決勝まで勝ち進むなんて思ってなかったわ…」
「うん…」
「まだ数カ月しか経ってないのに、なんか懐かしいわね」
「だよね」
 そう言って顔を見合わせると、舞菜と紗由はどちらからともなく歩き出した。
「ねえ紗由さん」
「うん?」
「わたしたち、全然届かなかったね…」
「ええ…本当に全然届かなかった…」
 紗由は太陽に手をかざすと、こぶしをグッと握った。
 
 ステラマリスのステージ終了直後。
 静寂に包まれる会場内。
 聞こえるのは、パフォーマンスを終えたステラマリスの少し早い呼吸音だけ。
 完璧なパフォーマンス。
 客席の誰もが、ステージ上の3人、ステラマリスという存在に圧倒されて沈黙していた。
 その沈黙を破ったのは、ステージを終えた式宮碧音だった。
 客席に向かってほほ笑む碧音。その瞬間、観客は魔法が解けた様に我に返り―――
 会場内に万雷の拍手が鳴り響いた。

―――KiRaReは敗退した。

 握ったこぶしを見つめる紗由。
「私、自分たちのステージが終わって、お客さんがすぐ拍手してくれて、スタンディングオベーションで……『ああ、最高のパフォーマンスができた』と思ったわ。客席のみんなが感動してくれてるのが分かって、私もすごく嬉しくて感動した。でも、そう思った自分が全て否定されたみたいだった…」
 観客席の沈黙を思い出す紗由。
「私、息をするの忘れてたんじゃないかって…気がいたら心臓がドキドキしてて…」
「うん…わたしもそうだったよ…」
「ステラマリスのパフォーマンスは『感動』なんて言葉じゃ足りない…とにかく……」
 紗由が悔しそうに呟く。
「ステラマリスはすごい…」
「うん…」
 黙り込む二人。――が
「ああ! でもでも悔し~~っい!」
「さ、紗由さん!?」
 紗由の突然の叫びに驚く舞菜。
「私、悔しくて悔しくて悔しくて、うちに帰った後、泣きながら高尾山の山頂まで走ったの」
「え!?」
「それでも悔しさが晴れなくて、今でも毎日20キロ走ってるわ」
「20キロ!? それ、いくらなんでも体に悪いんじゃない…?」
「いいえ、むしろ逆よ。いっぱい食べて、いっぱい走ってるから、健康的なダイエットになっているわ」
「紗由さん…ついにダイエット成功しちゃったの…!?」
「ええ、悔しいけど……ステラマリスのおかげよ…」
「悔しいことばかりだね…」
「キーッ! そうなのよ! ホントっ、悔しいわ~~っ!」
 地団太を踏む紗由。
「紗由さん、『キーッ!』て、子供みたいで可愛い」
 くすくす笑う舞菜。
「え!?」
顔を真っ赤にする紗由。咳払いで照れ隠しをしつつ平静を装う。
「ま、まあ、悔しくって、つい興奮しちゃうけど、私、後悔はしてないわ。今の自分が出せる力、全部出せたと思うから。だからこそ、次は絶対負けない! もっといっぱい練習して、歌も踊りも上手くなって、KiRaReのみんなで絶対ステラマリスに勝つ! だから舞菜、次のステージ向けてまた一緒に頑張りましょう!」
「うん。わたし、ついていくよ!」
「ありがとう、舞菜」
 二人は笑顔を交わすと、肩を並べ軽い足取りで坂道を歩いて行った。



 舞菜と紗由が校門をくぐると、校舎脇の小さなスペースを行ったり来たりするかえの姿があった。
「あ、かえちゃんだ」
「何…してるのかしら…?」
「何かブツブツ言ってるみたいだけど…」
「……行ってみましょう」
「うん」
 舞菜と紗由は、かえのもとへ行くと声をかけた。
「かえちゃん?」
「………」
 無言で振り返ったかえの眉間には、深い皺が寄っていた。
「か、かえ? すごい難しい顔になってるわよ…」
「…当然。かえは今、真剣に今後のことについて考え、対策を立てている」
「今後のこと?」
「対策…? って、なんの事かしら?」
「…二人ともニブすぎる。今日かえたちがここへ呼ばれたのは、なぜ…?」
「なぜって…、私はこれからの練習方針について話し合うのかなって思っていたけど…」
「わたしは〝おつかれさま会〟でもやるのかなぁ…て…」
「…この、お気楽娯楽コンビ…!」
「「えっ!?」」
「…今日かえたちが呼ばれたのはKiRaReの存続に関して重大発表があるからに決まっている!」
 かえが興奮気味に早口で言い放つ。


「え…と…それって…」
「…ズバリ! 〝解散発表〟…!!」
「「か、解散!? どど、どうして!?」」
 舞菜と紗由が息ぴったりでハモる。
「…アイドルは負けたら終わり。KiRaReにとって〝プリズムステージ優勝〟はある意味公約だった。それを守ることが出来なかった以上、解散あるのみ…!」
「何か…政治家さんみたいだね…」
「舞菜、なに冷静に言ってるのよ! 解散、解散よ? もうKiRaReのみんなで一緒に活動できなくなるのよ!?」
「そ、そうだけど…」
「…あ! かえに今、名案が浮かんだ」
「「!?」」
 舞菜と紗由がかえに注目する。
「…かえの知り合いにスーパーハッカーがいる」
「「うん…」」
「…その人に頼んで、決勝戦の結果を〝優勝はKiRaRe!〟と改ざんしてもらう…!」
「えっ!」
「ダメダメダメ! それ犯罪よ!」
「…大丈夫。スーパーハッカーは捕まらない…!」
「そういう問題じゃないわよ!」
「…じゃあ…どうすればいい…」
 そう言うと、かえは黙り込んだ。舞菜と紗由もつられて黙り込む。
と、舞菜がぽつりと呟いた。
「香澄さんは…どう思ってるのかな…?」



「KiRaReが解散するのなら、ボクはサバゲ部オンリーになるだけだよ」
 サバゲ部の部室を訪れた舞菜たちに、香澄はそう答えた。
「ちょ、ちょっと待ってください! それって、謡舞踊部を辞めちゃうってことですか?!」
「そういう事だね」
「そういう事って…今までみんな一緒に頑張ってきたのに、そんな簡単に割り切れるものなんですか…!?」
「…紗由、それはたぶん違うと思う」
「え?」
「うん…プリンセスの言う通りだよ。ボクは、割り切ったんじゃなくて、最初から決めていたんだ。KiRaReがなくなってしまう時、ボクは謡舞踊部を去るってね」
「どうしてですか…?」
 舞菜が寂しそうに尋ねる。
「ボクはね、KiRaReの6人で高みを目指したいんだ。だから、一人欠けただけでも意味はない。だってそうでしょう? ボクにもう一度自分の声で歌いたいと思わせてくれたのは、KiRaReのみんななんだから」
「香澄さん…」
「………そういう事だったんですね……だけど…」
紗由は、まだ納得できないといった表情で少し俯いた。
「それより紗由はどうするの?」
「え?」
「確か、優勝できなかったら、退部なんじゃなかったけ?」
「はあっ!!!!!」
「…そういえば」
「部長さんが、紗由さんのお母さんとそんな約束をしてたよね…」
「すっかり…忘れてたわ…」
「ははは、ボクの事より、いやKiRaReの解散云々より、まず自分の事だね、紗由?」
 へたり込む紗由。
「ど、どうしよう…。ま、舞菜…どうしたらいいのかしら私…?」
「えーと、えーと…」
「そうだわ!」
 立ち上がり、かえに迫る紗由。
「かえ、知り合いのスーパーハッカーよっ!」
「…了解!」
「ふ、二人とも駄目だよ!」
「もうこれしかないのよっ!」
「お、落ち着いて紗由さん!」
「あー、もう! どうしたらいいの!?」
「紗由は、退部して一人になったとしても、アイドル目指すことは変わりないんだよね?」
「えっ…それは…もちろん…」
「だったら、慌てる必要はないんじゃない?」
「そう…ですけど、でも、やっぱりKiRaReが解散してしまうのは…」
「その事なんだけど…なぜ紗由たちは解散前提で話を進めているの?」
「え?」
「まだ部長の話を聞いていないでしょ?」
「そうだよ紗由さん! まだ解散て決まったわけじゃないよ!」
「でも…そう…そうよね!」
「まあ、とにかくここで話していても埒があかないから、部室に行こう」
「はい!」



 舞菜たちがサバゲ部を訪れていた頃、一足先にみいが部室へやって来ていた。
「瑞葉、おはよう」
「おはようさ…ん…?」
 瑞葉はみいの顔を凝視した。
「何?」
「『何?』って…その目、どうしたん…?」
 みいの目は充血しており、その周りも真っ赤に腫れていた。
「べ、別に何でもないわよ?」
「何でも無いことあらへんやろ? 喧嘩…したん?」
「そんなワイルドじゃないわよ! ちょ、ちょっと…ゴミが入っただけよ…」
「ごみだけでそんな腫れる? 何かあったなら話聞くで? うちら仲間やろ?」
「仲間…」
「そうや。謡舞踊部の仲間や。プリズムステージ優勝目指して――」
 みいが『ひっく』と肩を震わせしゃくり上げる。
「み、実ちゃん…?」
「ううっ……うわああ~~~ん」
「へ!? え!?」
「今のみいに〝仲間〟とか〝謡舞踊部〟とかプ、プ〝プリズムステージ〟とかは禁句なのみぃ~!」
「な、何で~!?」
「こっちが聞きたいみぃ~! ス、ステラマリスに負けて、みいたちは来年卒業だし、もう、ろ、ろ6人で一緒にステージ立てないと思ったら悔しくて悲しくて、KiRaReのみんなを思い出すワードを聞いただけで涙が出てくるみぃ~~! み、み、みいは、もう一週間ずーっと泣きっぱなしみぃ~~! 部室に来るまでも大変だったみぃ~~!」
「みいちゃん…」
「『みい』って呼ぶなみぃ。今は学校モードみぃ~!」
「せやかて…語尾に〝みぃ〟ってついてるから…」 
「みぃ~! だからここに来たくなかったみぃ~。ついつい、〝みいモード〟になってしまうみぃ~っ、ううっ、うわあああ~~ん」
 子供のように泣きじゃくるみい。
 瑞葉はみいのそばへ行くと、そっと抱きしめた。
「みいちゃん…」
 瑞葉の胸に顔をうずめるみい。
「み、みいは、謡舞踊部に骨をうずめる覚悟で頑張ってきたみぃ…。みんなと一緒に立てるステージは今年で最後だと分かってたから、生徒会の仕事をすこーしそっちのけでものすごく頑張ってきたみぃ…」
「うんうん、えらい、えらい」
「それなのに負けたみぃ~~、悔しいみぃ~~~」
「せやね…」
「神様は意地悪みぃ~」
「ほんまにそうやね…でもなぁ…」
「何だみぃ~」
「そんな悔しい思い、ちゃ~んと神様に届いたみたいなんよ」
 瑞葉の胸からクシャクシャの泣き顔を上げるみい。
「……みぃ…?」
「せやから、もう泣き止まんとな」



 その頃。稀星学園本校・アイドル部練習場では、ステラマリスの3人が練習中だった。
 激しい曲に合わせ、しなやかな動きで軽やかなステップを踏む碧音、瑠夏、珊瑚。ステージ上にいることを想定し、笑顔を崩さない。だが珊瑚の内心は――、
(おのれ~、月坂紗由っ! 月坂紗由っ! 月坂紗由~っ! ぐぬぬぬっ)
 決勝戦での紗由の洗練されたパフォーマンを思い出し、珊瑚は心の中で顔を歪めていた。
(優勝したのは珊瑚たちなのにっ! 圧勝だったのにっ! 全然っ、満足できないわっ~! キ~~っ!)
『ちょっと休憩』
 碧音の掛け声で踊りを止める珊瑚。内なる思いを抑え込み笑顔をキープしていたからか、不可抗力で口角がヒクヒクしてしまう。
「珊瑚ちゃん」
「は、はい! 碧音お姉さま!」
 碧音はタオルで汗を拭きながら珊瑚に近づくと、笑顔で一言いい放った。
「顔が怖いよ」
「!!!!!!!!」
 愕然として固まる珊瑚。
 碧音はそんな珊瑚を横目に練習場の外へと出て行く。
「大丈夫か?」
 はっ!と我に返る珊瑚。
 瑠夏が珊瑚の顔の前で手をひらひらさせていた。
「瑠夏…珊瑚…碧音お姉さまに顔が怖いって…」
「そうだな」
「え!?」
「予選の決勝が終わってから、心が乱れてるんじゃないか?」
「そ、そんな事ないわよ!」
「まあ…大体の原因は察しが付くけど…」
「え…!?」
「月坂紗由だろ?」
「なっ、なな何の事…?」
「『ふざけるな、月坂紗由!』と心の声が漏れていた…」
「違う! 『ふざけるな』じゃなくて、『おのれ、月坂紗由っ!』よ! ていうか、珊瑚は踊ってる時、心の中で思ってること口に出したりしないわ!」
 フフっと静かに笑う瑠夏。
「珊瑚は分かりやすい」
「!! るっ、瑠夏のバカ! 誘導尋問禁止!」
 顔を真っ赤にして怒る珊瑚。
「まあ、まあ、相手を認めることは悪いことじゃない」
「認めてないわよ! 珊瑚はただ、月坂紗由が珊瑚に引けを取らないパフォーマンスをしてたことが気にいらなくてムシャクシャしてただけよ!」
「それ、完全に認めてるだろ…」、
「だ、から違うってば! あ、あの時だけよ! 決勝の時だけは互角だったって事っ!   珊瑚はもっとできる子なんだから! とにかく、次のステージで会った時はぎったんぎたんにっ――」
 そう言い、珊瑚はふいに口を閉ざした。
「どうした?」
「……次って、一年先…?」
「本来ならそうだな」「キーッ! この珊瑚さまを一年も待たせるなんて、ほんと腹が立つわ月坂紗由っ!」
「『キーッ!』って…お前は子供か…」
「珊瑚はレディよ! て……あれ? 瑠夏…今、『本来なら』って言った?」
「言ったよ」
「それって…どういう意味?」 
 瑠夏は、上着のポケットから二つ折りの紙を取り出すと、珊瑚の前に差し出した。
「こういう意味だ」



 バァン!と開かれた扉から、紗由を先頭に舞菜たちが入って来る。
 ズンズンと歩き、瑞葉の目の前に立つ紗由。
「部長…」
 真剣な表情の紗由に、瑞葉とその隣にいたみいは顔を見合わせた。
「部長!」
 紗由が再び瑞葉を呼ぶ。
「は、はい?」
「単刀直入に聞きます!」
「な…なん…?」
 緊張する瑞葉。他の一同も緊張の面持ちで紗由と瑞葉を見ている。
「KiRaReは……解散、ですか…?」
「へ…?」
 瑞葉はポカンと口を開けた。
「今日、私たちを呼び出したのは、解散通告をするためですか…?」
「………ああ…」
 そう呟くと、瑞葉はクスリと笑い、大げさな溜息をついた。
「そうか…紗由ちゃんたちに勘づかれてしもうたみたいやね…」
「そ、それじゃあ、やっぱり…!」
 今まで黙っていた舞菜が口を開く。
「せやな、そうなるよなぁ…」
 そう言い瑞葉は袂からハンカチを取り出すと目頭を押さえた。 
「ぶ、部長さんが…涙を…!?」
「…天変地異」
「紗由…残念だけど…解散で決まりのようだ」
「いいえ…! 部長の口からはっきりと聞くまでは…私は認めませんっ! さあ、部長、はっきり言ってください!」
 グイッと瑞葉に迫る紗由。
「さ…紗由ちゃん…怖い…」
 わざとらしく怯む瑞葉。
 そんな瑞葉を見て、みいが呆れた様子で口を開く。
「瑞葉、いい加減にするみぃ…。紗由、あんし――」
「みい先輩は口を挟まないで下さい! 私は今、部長と話をしているんです!」
「み!? 何でみいが怒られるみぃ!?」
「あれ…? みい先輩…」
 舞菜がみいの泣き腫れた顔を見つめる。
「どどど、うしたんですかその顔?」
 かえと香澄がみいに注目する。
「…オーマイがっ…!」
「部長…喧嘩…かい…?」
「瑞葉と同じこと言うなみぃ!」
 バァン!と紗由が机を叩く。
「今はそんな事どうでもいいわ!」
「みっ! みいは『そんな事』みぃ!?」
「それで部長! どうなんですか!?」
 みいを無視して話を続ける紗由。
「はあー、もう少し勿体ぶりたかったやけど…」
 残念そうに言うと、瑞葉は一枚の紙を紗由に手渡した。
 紗由の周りに舞菜、かえ、香澄が集まって来る。紙を覗き込む4人が、同時に書かれていた文面を読み上げる。
「「「「ベストパフォーマンス賞…KiRaRe…?」」」」
「そう。全国の予選で優勝はできなかったけど、ベストなパフォーマンスを見せたチームに与えられる特別賞? みたいなのが今年からできたんやて」
「え…? なんか頭がついていかないんですけど…その特別賞って…どういう…」
「プリズムステージに出場できるって〝賞〟って事みぃ!」
「う…嘘…」
 信じられないといった様子で紗由が呟く。
「嘘の方がよかったん?」
 困惑気味の紗由に、瑞葉が優しくほほ笑む。
「解散なんてせーへんよ」
 かえが隣にいた舞菜のほっぺを抓る。
「か、かえ、ちゃん、ひぃたい…」
「…あ…本当だ」
 笑顔になる香澄。
「良かった…良かったじゃないか、紗由!」
「やったね紗由さん!」
 舞菜が紗由の手をきつく握る。
 じわじわと事態をのみ込んでゆく紗由。
「ええ…良かった…本当に…本当に…良かったわぁーーっ!」
 紗由が勢いよく舞菜に抱きつく。
「さ、紗由さん、い、痛い…」
 ジタバタする舞菜を横目に、香澄が無言でかえを抱き寄せる。
「…エンジェル?」
 かえが香澄を見上げると、その瞳が潤んでいた。
「…みんな…一緒…」
 香澄をぎゅーとするかえ。
「うん…」


 喜ぶ舞菜たちを見て視線を交わす瑞葉とみい。瑞葉にウインクするみいに、瑞葉もウインクを返す。そして、瑞葉はパンパンと手を叩いた。
「はーい、みんな」
 瑞葉を見る舞菜たち。
「喜ぶのはそこまでや」
「そうみい! プリズムステージ出場が決まったからって喜んでいられないみぃ!」
「オルタンシアの2人もベストパフォーマンス賞に選ばれみたいやし…」
「「「「え!?」」」」
「つまり、全国の予選を突破してきたステラマリス級のチーム、そしてKiRaReと互角のチームがみいたちの前に立ちはだかっているみぃ! 今まで以上の厳しい練習が待ってるから覚悟するみぃ!」
 顔を引締める舞菜、紗由、かえ、香澄。
「頑張ります!」
「紗由さんに同じです!」
「…バチこい」
「望むところだよ!」
「ほな、みーんな一緒に力合わせて~~」
「夢はでっかく、全国優勝みぃ!」
「「「「「はいっ!」」」」
 みんなの力強い返事が部室に響き―――――KiRaReの再出発が始まった。